Wink30周年を記念した特別コンテンツ。このWinkを影で支えた方々のインタビュー企画、今回お迎えしたのは、振付家の香瑠鼓(かおるこ)さん。Winkを語るには振付の妙は外せません。デビュー当時から2人を見てきた香瑠鼓さんのインタビューは終始笑いが絶えないものとなりました。
普通のようでいて、普通じゃないな、と感じました。「淋しい熱帯魚」は、リズムを刻んでいるさっちんとそれに対照的な翔子ちゃんが絵で見えたんです。
--Winkとの出会いは?どのような感じでしたか?
香瑠鼓:あの頃、アイドルユニット、BABEの振付をしていて、彼女たちの「GIVE ME UP」がヒットした流れで、Winkの振付の依頼がきました。まずは、Winkの下調べをしようと、テレビを見たんです。それは全く振り付けのない曲だったんですけど、最後にふたりが自信なさそうに震えながらくっつくんですね...それまで私が得意としていた振付は、足を高く上げたり、ダブルターンで回ったり、そういったダンスの要素を取り入れたものだったので、ある意味、初めてテレビで見たWinkは衝撃的でした。(笑)だけど、そのおどおどしながらくっつく様子が「おもしろい!」と思ったんですよ。妙に気になるというか。
--「おもしろい!」というひっかかりを感じたんですね?
香瑠鼓:普通のようでいて、普通じゃないな、と感じました。一見、ふたりとも普通なのに、平凡でない自分らしさを持っている。当時、「普通」というものを嫌っていた私にとって、目から鱗が落ちたような感じでした。
--初めて出会った頃の2人はどんな感じでしたか?
香瑠鼓:出会い始めの頃は、それこそ連日ダンスの特訓みたいな感じで毎日会っていたんです。レッスンには私服で来るので、そこで個性が見えましたね。さっちんは毎回違ったウィッグ(かつら)をつけて来てました。当時はウィッグがまだ流行っていない頃だったんですけど、彼女は自分なりのセンスを持っているアーティストタイプだな、と思いました。この間会った時に、その話をしたら、本人は思いっきり忘れていたんですけど。(笑)それをとても印象的に覚えています。
--翔子ちゃんはどうでしたか?
香瑠鼓:何事にも一生懸命な子でした。そうやって一生懸命やっているから、顔がこわばってましたね。(笑)彼女は優しい雰囲気の中に、お茶目でちょっと大胆なところもあって、そこがユニークだな、と思います。当時、将来の夢を「ペンションを経営して、お手製のお味噌汁をみんなにふるまいたい!」と目を輝かせながら言っていて、あの独特の感じはなんなんでしょうね...自然界の中の妖精みたいな子ですね。
--各々の個性で引き出したいな、伸ばしたいな!と思ったところはありましたか?
香瑠鼓:さっちんは「ノリ」のよさとポップなセンスのいい感じを見せたいな、と思いましたね。翔子ちゃんは品のいいお姫様という感じをうまく表現してあげたいな、と思いました。
--香瑠鼓さん独特の振付はどのように生まれるのでしょうか?
香瑠鼓:私の場合は、音楽を聴くと絵やかたちが見えたりするんです。「淋しい熱帯魚」は最初2人がバラバラの動きなんですけど、リズムを刻んでいるさっちんとそれに対照的な翔子ちゃん、それが絵で見えたんです。あの振付は完全に降りてきましたね。あの大魔神ポーズは絵までは見えなかったけど、「何となくこんな感じ」という感覚が降りてきて、それを大事にしながら、何度か動いていって、最終的にあの振付が生まれました。
--あの頃は、カラオケブームもあって、日本中で大魔神ポーズを真似していましたね、誰にでも出来る、ちょっと面白いポーズというのがとてもキャッチーでした。
香瑠鼓:当時、山田邦子さんが大魔神ポーズをフィーチャーしてパロディーにしてくれました。フジテレビ「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」の「やまかつWink」の振付も私がやっていました。大魔神ポーズというのは、邦子さんが命名したんですよ。邦子さんもあのポーズの中に面白さを感じてくれたんだと思います。
--当時、Winkのふたりが香瑠鼓さんに教えられた難しい振付を必死にやっていたら、それが結果的に無表情になってしまった、というのは本当ですか?
香瑠鼓:そうですよ。(笑)キメの揃わないといけないところはちゃんと揃わないとカッコ悪いから、私も必死でしたよ。自然のなりゆきでそうなっちゃったんです。よくよくみると、さっちんは自分の世界に入っているのでかすかに笑っているくらいなんだけど、翔子ちゃんはこわばってるんです、その2人の感じがちょうどよかったんですよ。翔子ちゃんの真面目さが後々こうなるとは思っていなかったです。
「人と違う自分だけの個性を見つける」時代という感覚をWinkの振付に入れ込んでみたんです。バラバラの振りで踊って、それぞれの個性を際立たせる、目論見(もくろみ)もありました。
--左右非対称、2人バラバラの振付というのがとても新鮮なのですけど、アイドルダンスの文脈でみると、どうなんでしょうか?
香瑠鼓:アイドルダンスでいうと、ピンクレディの土井甫(はじめ)先生の振付があって、その流れを私なりに進化させたのがBABEの振付だったんです。当時、80年代はマガジンハウスの雑誌が流行ったりして、時代が変わってきたな、というのは感じていました。「人と違う自分だけの個性を見つける」時代だなという肌感覚を私なりにWinkの振付に入れ込んでみたんです。一見似ている2人がバラバラの振りで踊って、それぞれの個性を際立たせる、という目論見(もくろみ)もありました。2人バラバラに踊ると情報量が増えるので、見ていて飽きないですよね?
--時代が変わる感覚を感じつつ、さっちん、翔子ちゃんらしさを大事にした結果、2人バラバラの振付が生まれた訳ですね。
香瑠鼓:Winkのふたりって、寄り添って手を合わせるだけでも可愛らしい独特の雰囲気があるんですよ。今、バリアフリーワークショップをやっているんですけど、上手に踊れなくてもその人の内面が表れた踊りというのは、人の心を打ちます。踊れる、踊れないに関わらず、その人だけが持っている個性や魅力があります。そういうものに気がつく、そういう個性をおもしろい!と感じる感性が昔から自分に備わっていたというのもあります。踊れなくてもカッコいいんだ!という考え方が元々自分の中にあり、当時、時代が変わる肌感覚を感じ、WinKの2人に出会って、楽曲の中でそれをビジュアル化させたという感じです。
--そういう香瑠鼓さんの感性が素敵です。ヒットするって、そういうことなんだな、と思います。
香瑠鼓:その年、Winkは「淋しい熱帯魚」でレコード大賞に輝き、たくさんの人たちがWinkの振付を踊ってくださって、それはとても嬉しいことでした。この振付には秘話があります。当時、「言葉が通じない」ことを苦にして、在日アジア人の女性が孤独の為に自殺した、というニュースがありました。言葉が通じなくたって、振付なら見てマネ出来る。例えば、振付をカラオケで踊って、それで友達が増やせたかもしれない、そしたら淋しくて自殺するようなことはなくなるかもしれない、そんなことを思ったんです。そんな折に「淋しい熱帯魚」が流行りました。だから、自分の振付が流行っていることに感謝しつつ、さらに強く願いをこめて振付をするようになりました。誰にでも出来るシンプルな振付にも意味があり、音楽という絶対的なものにあわせて、そのビートにのることができれば、素晴らしいものが得られる、そんな真剣な思いを振付に込めていきました。
--今年は「日清焼きそばU.F.O.」のCMで内田裕也さんが大魔神ポーズを踊り、話題になりました。他にも、振付に密かにこめたメッセージやここは注目してほしい!というのはありますか?
香瑠鼓:「淋しい熱帯魚」の♪Stop Stop♪という時の腕の角度にはこだわりましたね。少し古い感じだと、♪Stop♪で腕をピン!と伸ばしちゃうんですよ、腕を伸ばしきっちゃうとダサい!と思ったの、この腕の曲がり具合、腕を伸ばしきらないところが、平成初めの空気を捉えた私なりのこだわりです。♪JIRI JIRI♪で2人の腕がずれるのももちろんわざと!ですよ。あとは、♪ユラユラ Swinmmin'♪のところには特にこだわりました。手をゆらゆらと振りながら全身で揺れているところは2人が熱帯魚になってるの、熱帯魚が水槽の中で泳いでいるところを表しているんです。水槽の中でゆらゆら泳いでいる熱帯魚のイメージって、とっても雰囲気があるでしょ。その流れがあっての♪Stop♪に繋がるんです。この曲は、都会の中の孤独を描いているなぁ、と感じました。そういう描き方をする及川眠子さんの詞はさすがだなぁ、と思います。水槽の中って、都会の中にも置き換えられると思いました。水槽の中で飼われている熱帯魚、都会の中で飼いならされている私たちが美しく揺れている、とても詩的だし、深いなぁ、と思いました。
「One Night in Heaven」は自分の中でも「芸術」に近い振付だと思います。「永遠に対する憧れ」みたいなものを表現しようとしていました。
--なるほど...メロディー、歌詞、振付が三位一体となって、高いレベルで共鳴している、だからこそその時代を生きる人たちの心に響いてヒットが生まれた、というのがよく分かりました。
香瑠鼓:振付にはちゃんと意味を持たせているんですよ。2人はその振付の意味をちゃんと理解してから、踊ってもらいました。「One Night in Heaven」の親指と人差し指で作る輪っかにはちゃんと意味があるんです。
--あの輪っかや指先、手先の動きの組み合わせだけで、こんなにも豊かな表現が出来るのか?!と驚きます。もう少し詳しく教えてもらえませんか?
香瑠鼓:両手で繋げた輪っかをパンッ!って離して、星のキラキラした感じや街の輝き表現しました。♪都会(まち)はシャンデリア♪ですからね。あの輪っかには、おまじないの意味があるんですよ。輪っかと輪っかをふたつくっつけると、無限大∞のかたちになるでしょ。松本隆さんの歌詞「今一瞬が 宝石なの」とも共鳴していて、あの輪っかには、無限大のような意味が込められていて、私なりに「永遠に対する憧れ」みたいなものを表現しようとしていました。今って、全身で踊るでしょ。改めて映像をみると、あの頃の2人がホントに可愛いんですけど、手だけであれだけ表現するというのは、逆に今はないかもしれないですね。あぁ、今だからこそ、こういうのをやりたいなぁ。
--曲の間奏のあやつり人形みたいな振付がとても印象的なんですけど。
香瑠鼓:あぁ、さっちんがあやつり人形みたいに腕を広げて中腰でくるりと回るところね~。私は、芸能ごとをやっていますけど、「芸能」と「芸術」の間のバランスを時代の空気を感じながら、追及しているんだ!という気持ちが常にあります。芸術性というのは、自分の中にある精神性であるとか、哲学であるとか、そういうものの表現だと思うんです。芸術性を追求しすぎてしまうと、見ている人には分かりにくくなってしまうので、そこはやり過ぎないように気をつけています。
--そのさじ加減にセンスが表れますね~。
香瑠鼓:見えてきている時代の空気、そこを生きている人たちの心情、こんな風になりたいよね!って、みんなが思っている理想や夢みたいなものは感じ取っていたいんです。そういったものをまず受け取って、受け取った後に、自分の哲学みたいなものを入れ込むんです。そうやって振付を作っています。「One Night in Heaven」は自分の精神性みたいなものを入れ込むことが出来て、あれは自分の中でも「芸術」に近い振付だと思います。
--確かにあの間奏のダンスは、映画的な感じがして惹き込まれます。
香瑠鼓:あの振付のシーンは、アイドルの振付を超えていて、パフォーマンスですよね?コンテンポラリー・ダンスとして、海外持っていくような作品の風格があります。「One Night in Heaven」には天使のイメージがありました。天使って羽があってどこにでも飛んでいけるし、自由ですよね?そんな自由の象徴のような天使が実はあやつり人形なんだ、っていうメタファー。実際は、都会に生きている人間があやつり人形なんですけど、閉じてる都会に生きている人の背中には実は羽がはえているかもよ、みたいな、逆のイメージを込めたりしました。反対のものを同時に表現しているっていう多重構造をはらんでいるんです。
--ここでいう反対のものってなんでしょうか?
香瑠鼓:単純にいったら、「陰」と「陽」です。天使には羽があって、飛べるはずですよね?それに対して、人形は飛べない。詩の世界は、閉じた世界、都会の夜や星空を描いている。でも私が描いているのは、おまじない、永遠に対する憧れだったりします。都会は永遠じゃないけど、自然界は永遠、宇宙も永遠。「One Night in Heaven」の中にはいろんな相反する「陰」と「陽」が含まれているんです。
--ひとつのものにみえて、ダブルミーニング、トリプルミーニングが表現されているんですね?見ているほうも、全ては分からなくても、何か、深遠なものを感じ取ってしまっている感はあると思います。
香瑠鼓:この矛盾する感情を人は切なく感じたりしますし、この言葉で説明しきれないものが人の感情に訴えるんだと思います。そこをWinkのふたりが表現してくれているんです。
--深いですね...。
香瑠鼓:「淋しい熱帯魚」で描かれている金魚鉢の中で飼われている熱帯魚というのは、都会の中で生きている人間というのを投影していますし、これも多重構造ですね。あれがまさに現代社会なんです。あの当時はバブルでしたし、当時の日本をうまく表現していたんだと思います。見ている人は、自分たちの今の状況は、都会という金魚鉢の中で飼われている熱帯魚みたいだ、というのを直感的に感じとっていた、そういう今の自分たちの物語なんだ!というところに無意識に共鳴していたんだと思います。海や川といった自然界にはそういう閉じ込められた感じはないですからね。
ちょっとした動きでも感じ入ってしまうというのは、究極的には2人の魂が美しいのだと思います。動きの中に、その人の生き方とか、人間性が出てしまうんです。
--中期の作品だと「真夏のトレモロ」も印象的です。
香瑠鼓:オープニングのイントロでバキバキにきめていますね。もうたどたどしい感じはないですし、16ビートを感じて踊っていますね。2人で腕を組んだポーズできめたり、間奏のところはさっちんが膝をついたりしてね、その頃になると、エンターテイメント性がまして、魅せてくれていますね~。
--また、「ニュー・ムーンに逢いましょう」のラストで2人が手でハートマークを作るところがキュン!とくるのですけど。
香瑠鼓:これはね、歌の物語とリンクさせました。2人が逢えてよかったね!とか、恋のハッピーエンド的な意味をハートマークに込めました。テレビサイズって短くなるでしょ、見ている人に印象深く残るように、特に初めと最後は気を遣いましたね。2人はちょっとした仕草でも絵になるんです。お互いを思いやるような気持ちが表れているんだと思います。ちょっとした動きでも感じ入ってしまうというのは、究極的には、2人の魂が美しいのだと思います。ちょっとした動きの中に、その人の生き方とか、人間性が出てしまうんですよ。それを引き出せているのは、固定観念で人を見ないようにしているからだと思います。彼女たちの個性、素晴らしさを振付というかたちに残せてよかった、と心から思っています。その頃生きていた、たくさんの人たちとWinkの振付を通じてつながれたというか、影響力をあたえていただいて、とても感謝しています。
--Winkとの出会いを今振り返ってどうですか?
香瑠鼓:私は元々竹を割ったようなハッキリした性格ですし、みんなを巻き込んでく行動力とパワーに溢れた人間なので、そういった私の性格とWinkは対極ですよね。その全く違う個性に出会ったというのはとてもよかったです。Winkには「普通であって普通でない」というのを教えてもらいました。その当時、「自分の表現が芸術性は高いけれどもなかなか人には理解されない」というジレンマを抱えていました。その時代の状況とか、そこに生きている人たちの気持ちとか、ひいては、日本、世界といった時代の流れを受けとることによって見えてくるものがある、というのを学びましたね。時代の流れに乗る、ビートにのるということが大事なんだというのが分かったら、その時代にぴったりなものがつくれるようになった、というのがありましたね。Winkはホント品がいいのよね。曲のクオリティも素晴らしいし、気品が感じられて、今、そういうのないですよね~。
--Wink特有のマリオネットのような動き、無機質なロボットみたいなダンスという文脈の中で、Perfumeが出てきたとき、Wink的な何かを感じてしまったんですけど。
香瑠鼓:Perfumeの「ポリリズム」のサビの部分は私の振付なんです。Perfumeの場合は、時代も変わって、激しいダンスですけれど。究極のロボットダンスって「能」だと思うんです。ミニマムな最小限の動きの中にいろんな思いを込めて表現するというのは日本人特有かもしれませんね。日本人はとても繊細な美を感じて、表現してきたんです。最近のダンスは激しいのが多いから、何となく全体的に似てきてしまったというのはありますね、今なら逆にWinkのような抑制的な動きのほうが新鮮に映るかもしれないですね。今また流行るような気がしますよ。(笑)
時代の空気に合わせながら、覚醒していったんだと思います。その必死さで無表情になっちゃいましたが、結果的に全てがいいように働きました。
--Winkとの印象深いエピソード、最後に何かありますか?
香瑠鼓:この夏、NHK「思い出のメロディー」の収録時に久しぶりに2人に会いまして、Winkの映像が休憩中に楽屋のテレビ画面に流れたんですよ。それをみた翔子ちゃんが「先生、私たちってホント覇気がないですよね~」って自虐的に言ったのが、とっても可笑しくて、笑っちゃって。(笑)Winkってずっと変わらないで、相変わらず緊張して、表情も固くなっちゃうしね。でも「逆に品があっていいわよね!」って返しましたけどね。今時のアイドルさんたちはみんな元気でニコニコして親しみやすいじゃないですか?それとWinkは正反対ですからね。自分たちがどう見られているか、ちゃんと分かってるんですね。そうやって、自分たちのことを客観視出来て、分かってるからこそ、人気が出たんだと思いますよ。
--微笑ましいエピソードですね。
香瑠鼓:2人とも当時と変わらない感じが嬉しかったです。さっちんは自分の世界にすぐ入っちゃって。当時は私は眼鏡をかけていなかったんですけど、その収録に眼鏡をかけていったら、子どもみたいに「あ、先生、眼鏡!?」ってすぐ突っ込んできました。それがまた可笑しくて。(笑)さっちんは、すぐ自分の興味のある方向にいくんですよね。凄く久しぶりに会うんだから、普通は「こんにちは!」とか「お久しぶりです!」じゃないですか...さっちんは「こんにちは!」を言う前に、眼鏡のことを突っ込んできて、「あぁ、さっちんらしいなぁ」って。さっちんは自分の世界の中で生きていて、相変わらずちょっとズレてる感じがとても愛おしかったです。2人が揃うと独特のオーラというか、独特の雰囲気になりますよね。
--先日、Winkのイベントがあったんですけど、そのステージでも、独特の高貴なオーラは顕在でした。
香瑠鼓:昔はね、高貴なオーラという感じでもなくて、どこにでもいる普通の子だったんですよ。2人が出会って、切磋琢磨して行く途中で、そういう化学反応を起こしたんでしょうね。私も当時はスパルタというか、相当厳しかったですからね...それで初めは緊張しすぎて全然振りが合わなかったりしましたよ、そこで私もちゃんと出来るまでこだわりましたし、初めは自分たちだけの世界に住んでいた2人が、自分の我じゃなくて、ちゃんと先生の言ったとおりにやろう!と頑張ってついてきてくれました。その時代のビートを受け取りながら、時代の空気に合わせながら、覚醒していったんだと思いますよ。ちゃんとそういうことが出来るっていうこと、そういうことに身を投じられるっていうのが資質として大事ですよね。その必死さで無表情になっちゃいましたが、結果的に全てがいいように働きましたよね。ちょうどいい時代だったんでしょうね。
--では最後に何かありますか?
香瑠鼓:あの感じ、今見たら、逆に新鮮でうけると思うんですよ。私は是非コンサートをやってほしいな~、って思ってるんですよ。この間は「淋しい熱帯魚」だけでしたけど、他の楽曲の振付もみてみたいし、2人が踊る姿を見てみたいですね。
[総評]
振付に込められた意味やメッセージが幾重にも重なり、表現されていることには驚きました。2人のユニークな個性を初対面から感じとっていた香瑠鼓さん。その直感的なひらめきはWinkの本質を突いていました。いま一度、振付の意味を噛み締めつつ、Winkの映像を見てみると、新たな発見を感じられるかもしれません。
香瑠鼓(かおるこ)プロフィール:
振付家、アーティスト。1957年東京都生まれ。早稲田大学卒。Wink「淋しい熱帯魚」、慎吾ママの「おはロック」、グリコ「ポッキー」(新垣結衣)から、ピコ太郎「Love & Peace 音頭」、Qoo「ハロウィンダンス」篇(HIKAKIN)まで、手掛けた振付は1300本以上。斬新で独創的な振付に定評がある。長野パラリンピック開会式、映画「嫌われ松子の一生」、「20世紀少年」など、イベント、舞台、映画などでも多数の実績を持つ。一方で、障害のある人たちが参加する「バリアフリーワークショップ」を続け、22年目。自然界からヒントを得た独自のメソッドを体系化し、多数の講義や実習を行う。日本古来の共生の思想を芸術的に表現する公演や、観客との即興のやりとりを楽しむエンタテインメント公演などを通して、人々の身体(生命)の尊厳に向かい合う世界平和を目指している。
公式サイト http://www.kaoruco.net/