#3 EP盤ジャケット <特典ジャケットも公開!>

ディレクターの仕事はリリースの企画から音源制作、ジャケット制作などなど多岐に渡った作業があります。これまでは音源について書き綴りましたが、今回はEP盤ジャケットのお話です。
30年前にリリースしたEP盤の復刻ジャケットですので、これもまた古い素材の捜索から突入です(汗)。


当時は音源と同様、ジャケット制作もアナログの作業でした。写真素材は切り貼りし、テキストは写真植字でフィルムに印字し、印刷の素となる版下を作成します。カラー紙面は色表現の基礎となるCMYK(シアン/マゼンタ/イエロー/キープレート)の4つですので、おのずと版下(フィルム)も4枚で構成されます。そこから紙に印刷してようやくジャケットが完成します。現在では版下もデジタル化され、デザイナーさんがパソコンでデザインしたものをデータ化し、印刷工場へ送ります。


今回はさまざな状況から印刷会社が所有する高精度のスキャナーを起用して、そこからジャケットを完成させる道のりとなります。我々が普段使用する民生機器とは訳が違いまして、髪の毛1本をもほぼ忠実にスキャニングし、再現が可能となります(凄)。歌詞面とレコードのレーベル面もスキャニングデータを基にして、文字や誤植等の修正をしながら忠実に再現していきます。


今作のアナログ盤の流通会社でもあるユニバーサルミュージックの担当者がWinkファンであった事もあり(!)、今回の特典についてアイデアが出てきたのが「アナザー・ジャケット」です。早速、倉庫から写真素材を取り寄せてのビジュアル選定ミーティングを重ね、何とか使用出来る宣伝用写真も含めた各種素材が見つかりました(喜)。それらを使用しての「アナザー・ジャケット」の試作を進め、特典仕様について検討した結果、最終的にオリジナルジャケットと対となるダブル・ジャケット仕様に決定しました!(こちら、後ほど後半に公開します)


当時の宣伝用資料
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各仕様も決まり着々と制作を進行させますが、最終印刷の工程でストップ・・・(汗)。スキャニングが高度なあまり印刷物に網点が映り込んでいたのが見つかったのです。データ上で見る限りではわかりませんでしたが、ここがデジタルとアナログの盲点であって予測できない範疇だったのです。作業工程をデータ作成に戻り、あらためてジャケット写真の調整をして印刷にかける、これを何度か繰り返してようやく登頂(嬉)、しかし工程のギリギリ!


さまざまな理由から発売延期ということがありますが、今作もその可能性をはらんでいたのです・・・・。


ジャケットの校正紙
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カッティング同様、最後まで妥協せず最良の作品を作り上げてくれた、印刷担当者には感謝しかありません。印刷には自分にはわからない細部にわたる専門分野であることを再認識した次第です。


そして、最後に今作の特典でありますダブル・ジャケット写真を一挙公開します!!


Sugar Baby Love
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アマリリス
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愛が止まらない ~Turn it into love~
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涙をみせないで ~Boys Don't Cry~
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淋しい熱帯魚
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One Night in Heaven ~真夜中のエンジェル~
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SPECIAL TO ME
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Sexy Music
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いよいよ発売日が迫りましたが、ぜひ、ぜひ手に取って聴いて頂けますと嬉しいです。

#2 アナログ盤・カッティング

前回はマスタリングについてお話をしましたが、今回はいよいよカッティングです。
アナログ盤をプレスするにはスタンパー(原盤)という型が必要です。それを製品となる塩化ビニルに複製して完成します。参考までに、スタンパーは市販のレコードとは溝の凹凸が逆になります(機会があれば、ぜひ聴いてみたいんですが)。スタンパーを作るために、専用のマシンでマスタリング音源情報を特殊な石で振動させてラッカー盤に溝を刻みます。これが「カッティング」です。興味のある方は下記をご覧ください。
http://www.toyokasei.co.jp/record/movie.html(今作のプレス工場、東洋化成オフィシャルウェブより)


こちらが専用カッティング・マシン(年代物のドイツ製Neumann/ノイマン)
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カッティング・マシンのコントロール部(コンソール)とカッティング盤(Made in Japanのラッカー盤)
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カッティング盤はラッカー素材、製品は塩化ビニルですので素材の違いから音が変わります。そこを想定しながら作業を進めますが、特に高音の変化に注意しカッティングに臨みます。過度な高音は歪みを伴います。ゲイン(ボリューム)を入れすぎても当然、歪んでしまいます。後に、苦戦することになるのですが・・(汗)。


カッティング「その1」
当時リリースしたEP盤は少々中高域に歪み感があるので、10khz(まだ私にも聞こえるキーン音です笑)を-1db(ほんの少し)下げ、ゲイン(ボリューム)を0.5db~1db下げて、ザラつきや歪みを避けます。マスタリング同様、テーマは音の強さよりファット感です。カッティングして試聴、再度、カッティングを8枚繰り返しながら作業を終えます。安堵感に浸ったマスタリング・エンジニア小林さんと祝杯です(笑)。


翌日、小林さんのスタジオでカッティング盤を試聴しますが、少々ぼんやり感があり音の抜けがよくありません。。(涙)


マスタリング・エンジニア小林さんと共にカッティングしたラッカー盤を試聴
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カッティング「その2」
エンジニア小林さんと相談し、カットした高域をフラットに戻し、更に音のレンジ(低域から高域全般)を稼ぐため、ゲイン(ボリューム)を各-2db、-3db、-6dbで再度カッティングしてもらうことにしました。試聴の結果、音のレンジは満足のいく内容になりましたが、ゲインを下げた分、音圧が減少してしまいました・・・。 んー(悩)


カッティング「その3」
東洋化成さんへ2度目の訪問です。カッティング・エンジニアの西谷さんと相談してリマスタリングの音源に忠実に、音圧をキープするために歪む手前ギリギリまでゲインを上げて、カッティング~試聴~カッティングを繰り返します。その1とその2の作業の真逆です。作業を終えたカッティング盤を持ち帰り、今回は自分のオーディオ環境で試聴します。Wink以外のアナログ盤も聴き比べの為、いろいろ試聴しまくります。結果的に3回目のカッティングでベストなEP盤になると確信し、作業を終えます。


今回お世話なったプレス工場、東洋化成 http://www.toyokasei.co.jp
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(しかし)カッティング「その4」
慎重派な自分が翌日、もう一度聞き直します(笑)。もちろん納得のいく音源なのですが「Special To Me」のボーカルが歪みっぽいのでゲイン(ボリューム)を-1db下げて、再、再、再カッティング。すいませーん!こうしてようやく登頂できました(喜)。


今回のカッティングでは着地するまでに4回のカッティングを重ねました。何度もご協力頂いた東洋化成さんには本当に感謝です。


東洋化成のカッティング・エンジニア西谷さん(L)、マスタリング・エンジニア小林さん(R)と勝利の笑顔
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昨今はデジタルサウンドが日々進化し続け、ハイレゾ、DSDなどの高音質も評価されています。CDを含むデジタル音源とアナログ盤は全く別物であることを体感しまいした。アナログ世代でありながら、すっかりデジタルサウンドに馴染んでいた為に、今回は行ったり来たりいろいろ迷いがありました・・。アナログ盤は限られた直径17センチ(EP盤)足らずのスペースに、歪む手前限界のゲインで石(針)を振動させ削ります。物理的な問題から限度があるということです。しかしながら、アナログ盤は針を落とした時の「プツ」の音から始まり、回転が止まるまでの楽しみが醍醐味であると再認識しました。


今回8タイトルですが、全てのゲイン(音量)を揃えていません。それぞれの音源の特性を最大限に生かして楽しんで頂きたい、という思いからです。皆さんもご自分の環境で、自由に楽しんでいただけると嬉しいです。


ディレクターズノート#1でもお話ししましたように、後日ハイレゾ配信化する予定です。
そちらの音源と比較して楽しんでいただけると更に嬉しいです。


次回は音から少し離れ、復刻ジャケットのお話をしたいと思います。

#1 はじめまして。今回はマスタリングについて。

はじめまして。
Winkを担当していますディレクターのnkzwと申します。
当時のWinkをチャート番組で観ていた世代です(笑)。個人的な話ではありますが、その頃にレコーディング・スタジオにおりまして、「淋しい熱帯魚」を録音していたことをよく覚えており、あっという間にヒットチャートを駆け登る瞬間をみた一人でもありました。
あれからもう30年・・。
ディレクターの指名を受けたときには、自分と過去が繋がる瞬間でもあり感慨深いものがありました。
今回ディレクターズノートを始めるにあたりブログ形式で制作の裏舞台などに触れお届ければと思います。できるだけリアルにお伝えしたい故に少々専門的な書き込みもあるかもしれませんが、そこはスルーしていただき(笑)、気楽に読んで頂ければ幸いです。


30周年企画の第1弾として、4/27に8タイトルのEP復刻盤のリリースが決まりました。昨年から企画を温めていた、7インチ・シングルのアナログ盤です。これまで別のプロジェクトでアナログ盤を担当していましたが、復刻は初めての経験です。しかもデビューシングル「Sugar Baby Love」から6タイトルと、Winkを代表するタイトルばかりで期待とプレッシャーがのしかかります(汗)さらに当時プロモーション盤のみとして存在していたアナログ盤(CDが主流になり始めた時代に、なんとも贅沢な話です)、「Special To Me」と「Sexy Music」を初商品化する、文字通りの大盤振舞い企画なのです。特に「Special To Me」は和モノA to Z(2015年リットーミュージック発行)で脚光を浴び、実はDJ界でも人気を誇る1曲なのです。これは腕がなります。


発売に向け、音を最終的に調整する「マスタリング」→「レコードカッティング」→「ジャケット復刻」などなど、地味な(汗)作業が山積しますが、今回は「マスタリング」について裏舞台を赤裸々にお伝えします。


そもそもマスタリングとはレコーディングで仕上げた音源を、高域、中域、低域、CDやアナログ盤に収録する音圧(ボリューム)などのバランスを調整する最終段階の作業です。この後にプレス工場でCDやアナログ盤が製造されます。今回はオリジナル・マスターテープ(ほぼアナログ・テープ)から音源をデジタル化にして取り込み、マスタリングを施す、正にオリジナル・リマスターとります。30年以上経過したオリジナルテープを専用のオーブンで低温焼きし、乾燥させた後にテープレコーダーで再生していきます。


ずらりオリジナル・マスターテープ(おそらく初公開)
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シートに今はなきレコーディング・スタジオの印字があります。(左テープは私が在籍していたスタジオ)
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アナログ・テープレコーダー(スイスSTUDER社 A80 /JVCカスタマイズ!)
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右画像を見ていいただくと、ヘッド(磁性体)付近に黒い粉がみえます。古いテープ故に、再生ヘッドで擦れ落ちます・・(汗)
さらにはテープの粘りが取りきれずに、ヘッドとの摩擦に耐えきれずレコーダーが再生中に止まるといった不幸にも見舞われ、、(汗、汗)
「愛がとまらない」のカップリング、ではなくB面の「DING DING」がそれなのですが、後に紹介するマスタリング・エンジニア小林さんの経歴に、なんと編集スタジオにいたという情報が!最終的に編集で繋げ、曲を完成させるという神業で難を脱出しました(喜)


こういった数々のトラブルやリスクはあるのですが、アナログテープに収録されている音源には無限大の可能性があるのです。昨今のアナログ盤と同じく脚光を浴びているカセットテープがそうですよね。機会があれば、アナログ盤からカセットにダビングして聴いてみてください、「ああ、こういう音を聴いていただんた」と、記憶とともに感動が蘇ります、きっと。


四苦八苦する場面を乗り越えながら、無事に全16曲の音源を取り込むことができました。
まだ正式には発表できないのですが、後にハイレゾ配信(初!)も視野に入れて、デジタル24bit/96kHzのハイスペックで取り込みました。(通常のCDが16bit/44.1kHzの数値ですので、おおよそ倍のイメージですね)


マスタリング・エンジニアの小林さん(JVC Mastering Daikanyama)
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今回のオリジナル・リマスターでWinkサウンドをどういう方向にするかを編成スタッフ、エンジニアの小林さんと音を聞きながら打ち合わせを重ねます。80年代にデビューしたWinkは海外のアーティストを数多くカバーしており、時代背景にユーロビートがありました。ちなみに私自身もThat's Euro Beat(アルファレコード)を何度も聴いていましたし(カーステでは爆音)、中でも"Give Me Up"はバブル時代の代名詞といっても過言ではありません。メロディは基より優美な打ち込みアレンジが刺激的でした。


少々話は脱線しましたが、そういった音楽背景を継承しつつ、Wink2人のボーカルを主軸にすることに徹し、30年前のサウンドから、より聴きやすく、より楽しくをテーマに掲げてマスタリング・エンジニアの小林さんと作業を進めました。さらに打ち込みで構成される楽曲が今回は多くあるので、強すぎる音域(痛い)を気持ちよく、延びのあるサウンドに調整していきます。留意した点は古いテープ故にHigh(高音)落ちや音の抜けが悪い(ぼんやり)場面がありますので、それらを補正しながらボーカルを中心に自然なサウンドに聴こえるようファットに仕上げました。それによって、より表情豊かな音楽に仕上がったと思います。


この作業を終えると通常はCDプレス工場へ納品するのですが、本作はアナログEP盤ですのでカッティングといった作業が待ち受けています。
次回はその模様をリポートします。