ABOUT HAL HARTLEY

佐々木 敦 (ATSUSHI SASAKI)


画監督ハル・ハートリーは、たとえばクエンティン・タランティーノのような、ハリウッド帝国を向こうに回して、徐々に勢力を拡大しつつのし上がっていくような、あからさまな才人タイプではない。かといって、いわゆる“芸術家肌”の人ともちょっと違う。かたくななまでに自分の世界を描き続けている、いまではかなり珍しいタイプの映画作家であることはまちがいないのだが、それは彼にとって戦略でも信念の賜物でもなく、単に持って生まれた習性というかクセというか(笑)、要するにハル・ハートリーはハル・ハートリーであり、彼以外の誰でもない、ということなのだと僕は理解している。

『シンプルメン』『トラスト・ミー』『ニューヨーク・ラヴ・ストーリー』『愛・アマチュア』『フラート』、そして今回ようやく見ることが出来た3本の短編フィルムと、ハルの映画にはいつも似たようなタイプの人物たちが登場する。彼(女)らのほとんどがナイーブで不器用でセンシティヴで、しかし妙に理屈っぽかったり意地っぱりだったりする。ハルの映画は、誰もが友人の中にひとりぐらいは思い当たるだろう、そんな潜在的アウトローのような人物ばかりが繰り広げる、あくまでノリは日常的なのだけど、どっかヘンな物語だ。それはユーモラスで、人間味に溢れており、いつもちょっぴり哀しい。観客は、ひとつのストーリーを追っていくというより、いつしかハルの世界に自分自身が巻き込まれていることに気づくことになる。ほとんどいつも同じ俳優たちが演じる、名前も境遇も違うけれど、いつも確実に似たところをもった人々が、そこにいる。だからハルの新作を見ることは、しばらく訪ねていなかった都市(それはニューヨークやロングアイランドによく似た、でもどこでもない街でもある)で生活して労働して恋愛して苦悩している、顔馴染みの、だが本当のことをいうとまだよくわかんないところもある知人たちの近況を知らされることに似ている。このことは、今回リリースされるビデオ作品を見ても明らかだ。

 ころで、よく知られたことだが、ハル・ハートリーは別名ネッド・ライフルといって、ミュージシャン、コンポーザーとしてハートリー作品の映画音楽を担当している。ハルの映画を見たことがある人ならきっと覚えているだろう、透明感のあるギターやシンセサイザーを用いた、きわめてプリミティヴだけれど、不思議と耳に残るサウンドが、ネッド・ライフルの魅力だ。それはイヤになるほどハルの世界にマッチしている。映画監督としてのイメージ同様、音楽家としての彼も、今時珍しいくらいにアンチ・プロフェッショナル的=アマチュア的でありながら、彼以外の誰でもありえない、確固たる世界を築き上げている。ネッド・ライフルのアルバムを聴いていると、自分もなんとなく、ハル・ハートリ−映画の登場人物のひとりにでもなったような気がしてくる。それはつまり普段よりほんのすこしだけ、考え深くなってしまう、ということだ。

佐々木 敦


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