中島ちあきのデビュー・シングル「LOVE」、4曲入りという聴き心地の良いスタイルに固執したE.P.シリーズ第1作「Girl's Life」に続く第2作が半年ぶりに完成しました。プロデューサーは前作に引き続き安部泰宏が担当しております。
17歳だった中島ちあきも18歳を迎えました。皆さんも覚えがあるかと思いますが、10代の1年間というのは、青春時代に与えられた特権ともいえるべきもので、その時期に知り合った友達や身につけたものは一生、宝となり忘れられないものとなるはずです。中島ちあきにとっても、そんな特別な時期の記録として、このE.P.シリーズは成長記録であり、ダイアリーともいえるものです。
中島ちあきは私たちの目の前に現われるなり、ポップスを歌うべきその恵まれた歌声でその可能性を自らの手でこじ開けました。彼女にとってのポップスの開眼はカーペンターズ体験であり、それは変形やある意味では破壊がもてはやされる流れの中で、あまりに異質でありました。しかしNEXT(次代)は少数派といわれる分野から必ずやって来ます。"ポップスの復権"、"永久不変のポップスの創造"という理念の元に再度起ち上げられた新生"UITS"レーベルの第一弾アーティストとしてまさに中島ちあきは打ってつけの存在だったと言えます。
デビュー・シングル「LOVE」は有線を中心に地道にではありますが、長期にわたるチャート・アクションを見せており、その音楽性は少しづつではありますが、着実に浸透し、理解され、支持されてきています。現在のように、ジャンルとしての境界線が曖昧模糊となったミュージック・シーンで残っていくのは「文句なしにいい音楽」であると"UITS"は信じております。
本作「フォロー・ミー」はヴォーカリストとして新たな可能性を切り拓いている作品になりました。'60's,'70'sを基調にした、先人の構築したポップスへのリスペクトは、さらに身体感覚となって中島ちあきの歌の其処此処に表現されています。"変わって行くこと"と"変わらないこと"、その両面がポップスの背負った課題であり、どちらも等しく人々に強烈な印象を残し、共感を呼ぶという当たり前の、そして難関にトライするものとなりました。
タイトルの「フォロー・ミー」は1972年に公開された、ミア・ファロー主演による映画からインスパイアーされたもので、今なお隠れた名画として支持されています。そして「フォロ−・ミ−」には"私について来て!!"という願いと"私を理解って"という願いが込められています。私とは中島ちあきであり、ポップスのことでもあります。
中島ちあきはもうすぐ高校生活を終えて、新しい音楽生活へと踏み出します。これからの彼女がどんな夢をみて、そしてそれを実現していくのか、今から楽しみでなりません。今後の中島ちあき、そして"UITS"レーベルにご期待下さい。
M1. 春が来たなら
印象的なサビ部分から始まるアップ・テンポの曲です。モータウンやソフト・ロック系に代表される頭打ちのリズム、アレンジャーでもある村田陽一率いる"ソリッド・ブラス"の歯切れのいいブラス・サウンドや程良くイナタい懐かしいフェンダ−・ローズのソロ、そして曲の進行に伴って盛り上がっていくバラエティに富んだコーラスといった、ポップスの美味しい部分が凝縮された仕上がりになりました。春の訪れを待ちわびる、恋をする女の子の期待感を、そして実際高校を巣立って行く中島ちあきの気持ちを歌っています。ハーモニーこそポップスの神髄と私たちに感じさせてくれる曲は、初期の山下達郎、大貫妙子あるいは竹内まりや、EPOたちが創り上げたシティ・ポップスの再現とも言えます。いち早くカーペンターズやバート・バカラックを評価し、今なお敬愛し続けているミュージシャンが一堂に会して制作した曲がこのE.P.のオープニングを飾ります。
M2. Chain My Heart
これは打って変わって、スリ−・ピースだけによるロック・ナンバー。YOSHIEのドラムと渡辺等のウッド・ベースが絡むクールなベーシック・トラックに窪田晴男の幾何学的なギターが加わり、まれに見るギター・サウンドが出来ました。サザン・ロックの弛緩と、ニューヨーク・パンクの緊張が同居したような有機的なダイナミズム。現在、巷を跳梁跋扈するいわゆるバンド・サウンドとは一味違った独自のグルーヴを確立しています。中島ちあきの歌もいつになくクールな肌触りを感じさせます。中島ちあきの別の一面を示した、実験的な楽曲といえるでしょうか。
M3. 欠けゆく月
中島ちあきの今までに無い大人びた歌とサウンドがまず耳を捕らえるでしょう。サウンドの大半をY.M.O.の準メンバーと称される松武秀樹によるシンセサイザーが形作っています。ブライアン・ウィルソンが結局未発表に終わったアルバム「スマイル」の作成にあたってテーマとした「神に捧げるティ−ンエイジ・シンフォニー」という言葉を彷佛させるような仕掛けもチラホラ。唯一の生楽器アコースティック・ギターがどこかヨーロッパ的な情緒を漂わせながらも、無国籍な雰囲気を醸し出しています。他にも中後期ビートルズや10CCなどを思わせるサウンドも所々伺わせます。歌い出しの歌詞はジョン・レノンの「LOVE」へのリスペクトであり、奇しくも中島ちあきはジョンが凶弾に倒れた年に生まれ、その18回目の命日にこの曲のヴォーカルをレコーディングをしていました。そういえば、中島ちあきのデビュー曲も「LOVE」でしたね。これは何かの運命だと言ってしまうのは、ちょっと大袈裟でしょうか?
M4. 笑顔になるために-Smiling Face-
メリー・ホプキンというシンガーを御記憶でしょうか?そう、あのビートルズの情熱の塊でもあり、若気の至りでもあった"アップル"の秘蔵っ子としてポール・マッカートニーがプロデュースし、「悲しき天使」「グッバイ」という大ヒットを飛ばした彼女です。ポールとメリーよろしく安部泰宏と中島ちあきの前作から引き継がれるポップス・ワールドでこのE.P.は幕を開けます。ポ−ルのワンマン・レコーディングのような独特のサウンドは不思議な暖かさを感じさせます。映像がすぐに浮かんでくるような視覚的な歌詞ともども、このE.P.のエンディングに相応しい楽曲です。